住民税のしくみ
住民税は、都道府県が課税する道府県民税と市区町村が課税する市町村民税の二つから構成されています。これらについて、法人に対して課税されるものを法人住民税、個人に対して課税されるものを個人住民税といいます。
また、住民税はそれぞれの納税者ごとの所得に応じて課税される「所得割」と所得の有無にかかわらず課税される「均等割」から構成されています。
個人住民税
①住民税とは?
住民税とは地域社会の費用をその地域に居住している個人や法人で負担する税金であり、その年の1月1日に居住している道府県と市町村が課税します。住民税は道府県民税と市町村民税で構成され、それぞれが均等割と所得割に分かれます。1月2日以降の他の道府県や市町村に転居した場合には、転居前の市町村から課税されます。
均等割りとは個々人の所得金額にかかわらず一定額が課税されるものであり、所得割とは前年の所得に応じて課税されます。課税の基準となる所得割の標準税率(注1)と均等割額は次の通りです。
種別 | 道府県民税 | 市町村民税 | 合計 |
所得割 | 4% | 6% | 10% |
均等割 | 1,000円 | 3,000円 | 4,000円 |
(注1)道府県や市町村によって条例により所得割について制限税率を採用している場合があります。制限税率の上限は標準税率の1.1倍です。
(注2)道府県によっては均等割に別の目的税を上乗せして徴収している場合があります。
例)滋賀県・・・「琵琶湖森林づくり県民税」800円
茨城県・・・「茨城県森林湖沼環境税」1,000円
②申告期限と納期限
国税である所得税は毎年3月15日までに前年の所得について確定申告を行うことにより(給与所得者については年末調整で)精算されます。これに対して住民税は、前年の所得についての申告時期は所得税と同じ原則として毎年2月16日から3月15日までの間ですが、納税の時期が所得税と異なります。所得税の納期限は原則として確定申告期限の3月15日ですが、住民税の納期限は普通徴収と特別徴収により異なります。
③普通徴収と特別徴収
個人住民税の納付方法は普通徴収と特別徴収があります。
イ 普通徴収
普通徴収とは、市区町村から毎年6月に送付される納税通知書により納税者が自ら役所の窓口や金融機関等より税金を払い込む方法です。納付期限は原則として6月・8月・10月・1月の年4期です。この分割納付の他全納一時納付もあり、この場合には6月までに全額納付すれば一定額が「前納報奨金」として割引されます(注2)。
(注3)前納報奨金については自治体により廃止されている場合があります。
ロ 特別徴収
特別徴収とは、給与所得者について給与を支払う者(勤務先の会社や個人事業者)が、その年の6月から翌年の5月までの12回に分割して給与から天引きし納税義務者に代わって納付する方法です。給与所得と給与所得以外の所得のある方は、その両方を特別徴収によることもでき、また、給与所得に係る住民税のみ特別徴収により他の所得は普通徴収により納付することもできます。
特別徴収により住民税を納めていた方が退職した場合には次のいづれかの方法を選択することができます。
ⅰ 普通徴収・・・未徴収の残額を自分で納める
ⅱ 一括徴収・・・未徴収の残額を退職先から支給される最後の給与又は退職金から一括して徴収してもらう
ⅲ 特別徴収の継続・・・再就職先が決まっている場合には、新たな勤務先で特別徴収を継続してもらう
平成21年10月からは公的年金からの特別徴収も開始されています。この場合には年6回の年金支給時に支給される年金から住民税が天引きされます。
④住民税の非課税
次の要件に該当する方は住民税が非課税となります。
イ 均等割も所得割も課税されない方
・生活保護法により生活扶助を受けている方
・身体障害者、未成年者、寡婦又は寡夫で、前年中の合計所得金額が125万円以下の 方
・前年中の合計所得金額が次の金額以下の方
扶養親族がいない方・・・28万円
扶養親族がいる方・・・・28万円×(扶養親族の数+1)+16万8千円
ロ 所得割が課税されない方
・前年中の総所得金額等が次の金額以下の方
扶養親族がいない方・・・35万円
扶養親族がいる方・・・・35万円×(扶養親族の数+1)+32万円
⑤住民税の減免
次の要件に該当する方は申請日現在において納期限の到来していない住民税について住民税の減免をうけることができる場合があります。
・申請日現在において生活保護法の規定による生活扶助その他の扶助を受けている方
・傷病、失業、倒産又は退職等により所得がなくなり、又は極度に減少して生活が著しく困難になった方
・災害又は盗難等により財産について甚大な損害を受けた方
・疾病等による異常な出費のため、生活が著しく困難となった方
・課税期日の翌日以降に障害者、寡婦又は寡夫となり納税が著しく困難である方
・課税期日の翌日以降に納税義務者が死亡し、相続人において納税が著しく困難である方
上記要件に該当する場合であっても、必ずしも住民税の減免が認められるとは限りません。詳しくは居住地の市区役所又は町村役場でご相談ください。
⑥住民税の徴収の猶予
次の要件に該当する場合には、納税が確定している住民税について1年以内の期間に限って徴収の猶予を受けることができる場合があります。この場合において、猶予される金額により担保の提供が必要な場合があります。
・有する財産について震災、風水害、火災その他の災害を受け、又は盗難等にあった場合
・納税者や同一生計の親族が疾病又は負傷したとき
・事業を廃止又は休止した場合
・事業に大きな損失を受けた場合
上記要件に該当する場合であっても、必ずしも住民税の徴収猶予が認められるとは限りません。詳しくは居住地の市区役所又は町村役場でご相談ください。
法人住民税
①法人住民税とは?
法人については、その事業年度の所得について法人税(国税)の外に法人事業税、法人道府県民税及び法人市町村民税が課税されます。このうち法人道府県民税と法人市町村民税を併せて法人住民税といいます。
②個人住民税との違い
個人住民税は市区町村が税額を決定し納税義務者に対して「納税通知書」を送付してきます(この方法を賦課課税方式といいます。)。また個人住民税は道府県民税と市町村民税が一緒になって納税通知書に記載されています。
これに対して法人住民税は道府県及び市町村に対してその事業年度終了の日から2ヶ月以内に自ら税額を計算しそれぞれに申告書を提出し納税しなければなりません(この方式を申告納税方式といいます。)。ただし、東京都については法人都民税と法人区民税を一緒に申告します。
③均等割と法人税割
法人住民税は赤字・黒字関係なく課税される均等割と、法人税の税額を基準として課税される法人税割から構成されています。
イ 課税の基準となる法人税割の標準税率(注4)は次の通りです。
種別 | 道府県民税 | 市町村民税 |
法人税割 | 5% | 12.3% |
(注4)道府県や市町村によって条例により所得割について制限税率を採用している場合があります。制限税率の上限は6%です。
ロ 法人道府県民税の課税の基準となる均等割の標準税率は次の通りです。
資本等の金額(注5) | 道府県民税 |
50億円超 | 年額80万円 |
10億円超 50億円以下 | 年額54万円 |
1億円超 10億円以下 | 年額13万円 |
1千万円超 1億円以下 | 年額5万円 |
1千万以下 | 年額2万円 |
(注5)資本等の金額=資本金+資本積立金
(注6)公益法人等については年額2万円
(注7)道府県によっては均等割に別の目的税を上乗せして徴収している場合があります。
資本等の金額(注5) | 森林湖沼環境税 |
50億円超 | 年額80,000円 |
10億円超 50億円以下 | 年額54,000円 |
1億円超 10億円以下 | 年額13,000円 |
1千万円超 1億円以下 | 年額5,000円 |
1千万以下 | 年額2,000円 |
ハ 法人市町村民税の課税の基準となる均等割の標準税率は次の通りです。
資本等の金額 | 従業員数 | 市町村民税 |
50億円超 | 50人超 | 3,000,000円 |
50人以下 | 410,000円 | |
10億円超 50億円以下 | 50人超 | 1,750,000円 |
50人以下 | 410,000円 | |
1億円超 10億円以下 | 50人超 | 400,000円 |
50人以下 | 160,000円 | |
1千万円超 1億円以下 | 50人超 | 150,000円 |
50人以下 | 130,000円 | |
1千万円以下 | 50人超 | 120,000円 |
50人以下 | 50,000円 |
④法人住民の分割
2以上の市町村又は都道府県に事務所。事業所等を有している法人は、一定の基準に従って法人住民税を事務所・事業所等の所在する都道府県又は市区町村に分割して申告・納税しなければなりません。
⑤各種届出
法人について次に掲げる事由がある場合には異動届をしなければなりません。
・新たに法人を設立した場合又は解散した場合
・新たに支店・工場棟を設置した場合又は廃止もしくは休止した場合
・本店の所在地・資本金・代表者・商号などの登記事項を変更した場合
・事業年度を変更した場合
・法人の分割・合併があった場合
・連結納税の承認又は承認の取消しがあった場合